ヘッドラインのいちばんに西部邁さんの自殺が。
かねてから、自分の人生は自分自身で始末をつけると公言しておられた。
見事な死というほかない・・・。
いわゆる「保守」の定義づけを論理的に始めたのは西部さんであるが、
ご自身も、昨今流行りの似非右翼・似非保守主義(櫻井よしこ等の
グループ→慰安婦問題の意見広告を韓国ではなくてアメリカの新聞に載せた
論理のイロハもわからぬ手合い達)とは全く異なった真正の保守思想家であ
った。
彼の保守思想はその著書に、見事なまでの論理的な文章によって展開されて
いるのだが、私の逆説的な本音を言うと、まさにそれゆえに永い間、小林秀
雄的な文章、すなわち論理のつじつまが合わなくなると、「直観」を持ち出
して我々をけむに巻く得体の知れぬ文体や稀代の悪文家である吉本隆明の
わけのわからん文体に馴染んで?何となく理解したような?気がするのに
較べると、その文字通りの論理的な文章を追っていくことがヘンな意味で、
かなりシンドイ。(日本人は慣れていない、つーことなのだろう。)
そこで、わかりやすいように西部さんの「保守」と近似値の著名な文化人・
作家等の名前を挙げれば「豆腐屋の四季」の松下竜一、「蛍の墓」の野坂昭如、「人形」の小林秀雄、「楢山節考」の深沢一郎、「日本文化史観」の坂口安吾、
佐賀の農民作家・山下惣一さんなどが思いつく。「裸の島」の監督・新藤兼人
と監督の盟友の俳優・殿山泰司を加えてもエエだろう。
風土の異なる地方人と都会人(下町っこ)の違いはあるが、吉本隆明もその
思想の土壌である生活感において、西部さんと通底するものがある。
あっ、そうそう、昨秋引退した政治家の亀井静香の名も挙げるべきか知らん。
(アメリカの原爆を戦争犯罪として告発し、賠償を求めた政治家は亀井静香
ただ一人である。)またその亀井と数年前に緑の党で一緒になった阿部知子
議員。三者ともに暖かなヒューマニズムが共通している。
今世紀に入ってから特に、日本の政治文化はアメリカの属国・半植民地である
ことを大っぴらに許容するようになってきた。似非保守どもが、「価値観を
同じにする」とほざいてあらゆる問題で、アメリカの意に沿うような卑屈な
態度を取るようになってきたのは情けない限りである。
日本人がトランプ大統領と価値観が同じ?? バカも休み休み言え。
若い人は知らんだろうが、40年ほど前には、「社会主義国のソ連の核兵器は
防衛的なものだから許される」とか、「社会主義国である北朝鮮が拉致なぞ
するはずがない」なんつー主張がまかり通っていたが、「ご主人様のアメリカ
の言い分には何をおいても耳をかさなければならぬ」つー今の政治的状況は、
逆の意味でソックリである。
似非右翼・似非保守の「愛国心」は「対米忠義心」のことであって、決して
日本を愛することではない。
西部さんはずっとそのことを憂慮しておられた。
明日以降、吉本隆明の死去の時と同じようにメディア上でいろんな学者や文化
人が追悼文めいたものを起稿することだろうが、その論者の「保守」の真贋を
我々は見抜かなくてはならない。
それが、我々の西部さんへの香典代わりの勤めだ・・・。 合掌