元厚生次官夫妻を殺害した小泉被告は、公判の意見陳述で
「あなた方は殺人、殺人というが、同じ命ある動物たちを、
無造作・無節操に幾万も殺していいのか。」とのたもうた。
被害者の殺害との脈絡が、不可解・不分明で、あまりにも
飛躍し過ぎているのは、誰しも思うことだろう。
精神分析の専門家でさえ、彼を理解することは不可能だろう。
だが、汎神論を奉ずる私は、小泉被告の言い分もわからぬ
わけでもない。
が、彼は動物の人間による虐待にことよせて、実は自分を
偽っている。
私は、この事件の底流には、昨今の不景気の中、庶民の
生活のシンドサとは、およそ懸け離れた高級官僚の意識や、
その天下りの連中に対する反感が、この小泉被告にも、
通奏低音のように流れていると確信している。
失業者の就職難や、派遣や母子家庭等のワーキング・プア
の人達の生活苦。
それを援けるためと称して、「しごと館」に象徴的に代表される、
雇用何とか基金とか、職業訓練何とかとか、高齢者雇用何とか、
の事業を次から次へ立ち上げる・・・。
だが、その実態は、天下りの連中の人件費が、事業費の半分を
占めるとかで、昔の封建時代の悪代官よりもはるかにたちが悪い。
彼らに対してのウラミ・ツラミや憎しみ・やっかみ・反感が、
庶民の世界には疑いもなく存在する。
そして、小泉被告はそのことを重々承知しているのである。
犯罪の傾向つーのは、その時代の世相を如実に顕すものである。
幼児への虐待やら、アキバ事件のような無差別殺人がそうである。
この元厚生次官殺害事件が起きた当初、メディアはこぞって、
政治テロ?の報道を流した。
(折りしも、「例の消えた年金」問題で 世間がかしましかった
こともあった。)
すなわち、庶民の意向に敏感なマス・コミ自身も、実は天下りに
対して、反感(憎しみと言ってよい。)を抱いていたのは間違いない。
ゆえに、マス・コミも第一報から、「すわ、政治テロ?」との報道を
流したのである。
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あのアキバ事件が、小泉・竹中路線(何でも自己責任路線)への
抗議の暴発であったように、
元厚生事務次官夫妻殺害事件も、一般庶民の不満・反感を
凝縮した(筋違いの)逆切れであったことは間違いない。
天下りの高級官僚への反感が、異常な形で顕われたと
考えるべきであろう。