20年ばかり前、ラジオで或る人の人生が紹介されていた。
私は、その話になんともいえない、うらやましさを感じた・・・。
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こんな話・・・
その人は、30歳くらいのときに、郵便配達員になった。
受け持ちの区域は、川沿いに集落が点在する、山奥の
寒村であった。
彼は、一日をかけて、バイクで全部でわずか数十戸の民家を
廻った。そのほとんどの家は、若い者はとっくに都会へ出て
老人ばかりの寂しい所帯であった。一人暮らしも多かった・・・。
やがて彼は、村人に馴染んでくると、配達の途中でよく茶を
ご馳走になった。その家の住人が彼を、ひきとめたのである。
「郵便やさん。まあ、ゆっくりしていきなんせえな。」「はあ・・。」
自然豊かな山奥のこと、四季折々の話題には事欠かない。
そのうち老いた村人たちは、その地に昔から伝わるいろんな
民話や伝説を、茶飲み話の中で語ってくれるようになった。
配達員は、簡単な録音機を持ってそれらを採集するのが、もう
ひとつの仕事になった・・・。
そして、30年近くその山奥の寒村の、郵便配達の仕事を続けた
あと、彼は退職することになった。彼は退職金で、その山奥の
寒村の老人たちから聴き採った民話を、一冊の本にまとめて
自費出版した。
最後の郵便配達の郵便物は、彼の作った本であった・・・。
彼は、二度と足を踏み入れることはない村の見慣れた、畑や山の
風景、柿の木や小川、よく転んだ山路等を、目に焼き付けながら、
一軒、一軒、別れの挨拶をしながら、本を配達して廻った・・・。
かって話を聞いた、老人夫婦が此の世を去って、無人になって、
朽ちかけた家にも軽く会釈して通り過ぎた。
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私の田舎です・・・
今日の一曲 Hayley Westenra - Heaven (2003)
(映像がとても、きれいです・・)
あるいは Hayley Westenra SOP -Heaven ( バック・コーラスなし)
※ ユーチューブでどうぞ・・・ ♪